Mさんを想う

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Mさんを想う

ようやく1ヶ月が経とうとしています。54年の尊い人生が終わりを告げた日から・・・

4月に開所を迎えたあいすくりーむの家には、新居を待ちわびた利用者さん19名の笑顔がありました。

Mさんもそのお一人でした。

 

3年ほど前にS字結腸癌の診断を受け、余命6ヶ月の宣告を受けたMさん。

ご家族は治療の困難さから「治療はせずに痛みだけは取り除いてあげたい」とご希望されました。

その当時は大地の家に入所されていましたので、通院をしながら出来るだけ今まで通りの生活を

送っていただけるように支援をさせていただいておりました。

 

その間に「あいすくりーむの家」の設立構想も進み、ようやく現実の物へと展開を始めました。

Mさんは「あいすくりーむの家」が出来るのを待っていてくれたのでしょうか???

実はあいすくりーむの家に来られる前にはすでに癌転移も見られ食欲も落ち、食べることすら

苦痛に思われる日が続くようになっていたのです。

 

あいすくりーむの家の初日はお好み焼きパーティーとなりました。Mさんに食べていただけるか?

職員の心配は不要でした。親しい顔ぶれの中で皆さんと一緒にお好み焼きを食べていただくことができました。

この後の食生活は、ほぼ皆さんと一緒のメニューで食事を摂ることができ、亡くなる前日まで大好きな

「カレーライス・明石焼き・ジュース・アイスクリーム」を頂いてもらうことができました。

日中活動においても、みんなの中で、音楽を聴いたり、テラスで過ごしたりとゆったりした時間の流れを

過ごしていただきました。「かいのき」まで出向けないときは、あいすくりーむの家に利用者さんが来られ、

リビングが活動の場となりその中で一緒に過ごしていただいたこともありました。

ご家族や私たちが拘ったのは「いつもと変わりなく」ということでした。

 

今年に入り、主治医が変わり往診をしていただくようになりました。この頃からです、

痛みが強くなり始めたのは・・・「痛みは取ってあげたい」とのご両親の想いで強い薬の使用が始まりました。

 

あいすくりーむの家に移られても毎週のように主治医に往診をしていただきながら、看護師との連携を図り

24時間の体制を作っていきました。職員間の意思統一は勿論のことご家族の想いに寄り添うことはとても

大切なこと感じております。そして少しでもご家族との時間を過ごしていただきたいという思いから、

ご自宅へお連れしたり、ご家族にはいつでもお越しいただけるようにお声掛けをさせていただきました。

それらの時間を大切に過ごしていただくことで、少しはお互いの想いを整理していただく時間に代えさせて

いただけたかと感じています。

 

長い闘病生活の中で、Mさんは幸せを感じていただけたのでしょうか?

デスカンファレンスの中でも答えなどありませんでした。

 

「食べることに大きなリスクがあってもあなたがアイスクリームを食べたいと望むのなら私たちはその思いに

全力を尽くします」そのためにも一人ひとりを大切に思い寄り添うこと(その方を知ること・・・)の大切さを

Mさんから教えていただいたような気がします・・・

最期の時は勿論ですが、それまで元気な時にこそ悔いのない日々を送ることが大切と改めて感じています。

 

Mさんへのご冥福をお祈りしながら、私たちは決してあなたのことを忘れません。

ありがとうございましたMさん・・・

 

 

     

 

                           

                              あいすくりーむの家 奥山智子

                                   2018.06.28